
事業承継を考え始めると、設備投資や専門家への相談費用、M&Aの手数料、統合後の体制づくりなど、想像以上にお金がかかる場面が出てきます。
一方で、費用を理由に検討が止まってしまうと、引継ぎが遅れたり、選択肢が狭まったりする可能性があります。
そこで確認したいのが、国の「事業承継・M&A補助金(旧:事業承継・引継ぎ補助金)」です。
事業承継やM&Aをきっかけに行う投資や改革、専門家活用、PMI、廃業に伴う費用の一部が補助される制度として知られています。
この記事では、「事業承継 補助金」で調べるときに押さえるべき全体像を、最新の枠組み(4枠)を中心に整理します。
事業承継 補助金は「4つの枠」から選ぶのが基本です
一般に「事業承継 補助金」として言及されるのは、主に国の「事業承継・M&A補助金」を指すことが多いです。
令和7年度補正予算ベースの情報では、最新公募は次の4枠構成に整理されています。
- 事業承継促進枠
- 専門家活用枠
- PMI推進枠
- 廃業・再チャレンジ枠
どの枠が適するかで、対象経費や補助率・上限額の考え方が変わります。
まずは「承継前の投資」なのか「M&A実行の専門家費用」なのか「統合後(PMI)」なのか「廃業」なのかを整理することが重要です。
制度の狙いは「承継をきっかけに前へ進む投資」を後押しすることです
円滑な事業承継・M&Aを促進するため
事業承継は、親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)など複数の選択肢があります。
ただ、いずれも法務・税務・財務の論点が絡み、検討や実行に専門家の関与が必要になりやすいです。
補助金は、こうした実務コストの一部を補助し、承継の停滞を減らす狙いがあると考えられます。
承継を契機に「経営革新」や生産性向上を進めるため
承継はゴールではなく、承継後の成長が問われます。
たとえば設備更新、新商品開発、店舗改装、販路開拓、IT導入などは、承継後の競争力に直結します。
このため、枠によっては投資や改革にかかる費用が対象になりやすいとされています。
M&A後のPMIや、廃業時のソフトランディングも視野に入っているため
M&Aは成約後の統合(PMI)でつまずくケースもあると言われています。
また、承継やM&Aを検討した結果、廃業が最適解になる場合もあります。
最新の枠組みにはPMI推進枠や廃業・再チャレンジ枠が含まれており、「実行前から実行後、そして撤退まで」を一定範囲で支援する設計になっていると見られます。
4つの枠の違いを押さえると、申請の迷いが減ります
事業承継促進枠:承継を機に投資や新展開を進めたい方向けです
事業承継促進枠は、親族内承継や従業員承継などを予定し、承継を契機に経営革新の取り組みを行うケースが対象とされています。
対象者の目安として、「5年以内に承継を計画している事業者」などが挙げられることがあります。
補助率は1/2または2/3(小規模事業者は2/3)とされることが多く、上限は800万円〜1,000万円が目安です。
賃上げなどの要件を満たすと、上限が800万円から1,000万円へ引き上げ可能な類型があるとされています。
専門家活用枠:M&Aの検討・実行で専門家費用が中心になります
専門家活用枠は、株式や事業、事業用資産などの経営資源を譲り渡す側・譲り受ける側の双方が対象になり得るとされています。
中心となるのは、M&A仲介会社やFA、弁護士さん、公認会計士さん、税理士さんなどへの専門家費用です。
補助率は類型により1/3・1/2・2/3など幅があり、小規模事業者は2/3が基本ラインのパターンが多いと言われています。
上限は買い手支援類型で600〜800万円が原則とされる一方、条件を満たす「100億企業を目指す事業者」は2,000万円の上限枠があるという情報もあります。
PMI推進枠:M&A後の統合(PMI)に取り組む方向けです
PMI推進枠は、M&Aで経営資源を譲り受けた後、統合プロセス(PMI)に取り組むケースが対象とされています。
PMIでは、組織体制づくり、人材育成、システム統合、ブランド統合、販路再構築など、やるべきことが多岐にわたります。
そのため、PMIコンサル費用やシステム導入費用などが対象になり得る枠として整理されているようです。
廃業・再チャレンジ枠:廃業費用の負担を抑えたい方向けです
廃業・再チャレンジ枠は、事業承継やM&Aの検討・実施に伴い、廃業を行う事業者が対象とされています。
在庫処分、解体費、廃業手続きの専門家費用など、廃業に必要な支出が対象になり得ます。
補助率は1/2・2/3、上限は150万円程度というパターンが一般的と紹介されることがあります。
補助対象になりやすい経費は「投資」「専門家」「廃業」に大別されます
具体的な対象経費は公募要領での確認が必須ですが、代表例は次のとおりです。
投資・販路開拓に関する経費
- 設備投資費用(機械・装置・IT機器など)
- 店舗・事務所の改装工事費用
- 広告宣伝・販路開拓費(WEBサイト制作、チラシ、展示会出展など)
人件費(条件付きのことが多いです)
- 補助事業に直接従事する従業員さんの人件費(枠や条件により扱いが異なる可能性があります)
専門家費用(M&A・PMIで重要になりやすいです)
- M&A仲介手数料、FA費用
- デューデリジェンス(DD)費用
- 契約書作成・交渉支援(弁護士さん等)
- PMIコンサルティング費用
廃業に関する経費
- 在庫廃棄費、在庫処分費
- 解体費
- 廃業手続きに関する専門家費用
使いどころが分かる具体例(3ケース)
ケース1:従業員承継を機に、設備更新と販路開拓を進める
たとえば、後継者さんが代表に就任するタイミングで、老朽化した機械を更新し、あわせて新商品の販売ページを整備するケースです。
この場合、承継を契機とした投資・新展開として、事業承継促進枠の考え方に沿う可能性があります。
設備投資費やWEBサイト制作費などが対象になり得るため、資金計画の不確実性を下げられることがあります。
ケース2:第三者承継(M&A)で、仲介・DD・契約実務の費用を補助対象にする
売り手企業さんが「譲渡先を探したい」と考え、仲介会社さんに依頼し、買い手候補との交渉に弁護士さんが関与するケースです。
また買い手企業さん側でも、財務・法務DDを実施し、最終契約へ進む流れが一般的です。
このような局面では、専門家活用枠で専門家費用を整理して申請するという発想が有力だと考えられます。
ケース3:M&A成約後、システム統合と人材育成を急ぐ
M&A後に、会計システムや販売管理の統一、評価制度の整備、管理職研修などを進めるケースです。
統合が遅れると、二重業務や意思決定の遅れが生じる可能性があるため、PMIに計画的に投資する意義は大きいとされています。
この場合は、PMI推進枠の対象になり得るかを確認することが現実的です。
ケース4:承継を検討したが、廃業が最適と判断し、費用負担を抑える
後継者不在でM&Aもまとまらず、在庫処分や原状回復、解体が必要になるケースもあります。
この場合、廃業に関する支出が集中するため、廃業・再チャレンジ枠で対象経費を確認することで、資金繰りの見通しが立てやすくなる可能性があります。
申請前に確認したい注意点(失敗を減らす観点)
最新情報は公式サイトで確認する
公募回によって要件や対象経費の扱いが変わる可能性があります。
最新の公募情報は、旧サイトから新サイト「shoukei-mahojokin.go.jp」に集約されているとされています。
上限額や補助率は「目安」で、要件で変動する可能性がある
たとえば、賃上げ要件を満たすと上限が引き上げられる類型があるとされています。
一方で、要件未達の場合は計画の見直しが必要になる可能性があります。
数値は公募要領の該当箇所で最終確認するのが安全です。
自治体の助成金も並行して検討する
「事業承継 補助金」で調べる方の中には、国の制度に加えて、東京都など自治体独自の助成金を探している方も多いです。
国と自治体で目的や対象経費が異なる場合があるため、併用可否も含めて確認すると選択肢が広がる可能性があります。
事業承継 補助金は、目的に合う枠を選ぶことが成果につながります
「事業承継 補助金」は、主に国の事業承継・M&A補助金を指すことが多く、最新の枠組みは4枠に整理されています。
- 承継を機に投資や新展開を行うなら、事業承継促進枠
- M&Aの仲介・DD・契約など専門家費用なら、専門家活用枠
- M&A後の統合(PMI)なら、PMI推進枠
- 廃業に伴う費用なら、廃業・再チャレンジ枠
補助率や上限額には目安が示されていますが、最終的には公募要領での確認が必須です。
次の一歩は「枠の仮決め」と「経費の棚卸し」から始めるのが現実的です
事業承継は、検討期間が長くなりやすいテーマです。
その分、補助金の活用余地も広がりますが、枠選びを誤ると申請作業が遠回りになる可能性があります。
まずは、次の2点を紙に書き出してみることが有効です。
- 自社が今いる局面(承継前の投資、M&A実行、PMI、廃業)
- 今後12か月〜数年で想定する支出(設備、改装、広告、専門家、システムなど)
そのうえで、公式サイトの公募要領を確認し、必要に応じて認定支援機関や専門家さんへ相談すると、手戻りを減らせると思われます。