
会社を売却するとき、いちばん気になるのは「結局、税金でいくら引かれて、手元にいくら残るのか」という点だと思われます。
ただ、会社売却の税金は一律ではありません。
売却方法が株式譲渡なのか、事業譲渡なのかで、課税される人(または法人)も、税率の目安も、手続きの負担も大きく変わります。
本記事では、会社売却で発生しやすい税金を「誰に」「何が」「どれくらい」かかるのかという観点で整理し、手取りのイメージが持てるように具体例も交えて解説します。
会社売却の税金は「株式譲渡」か「事業譲渡」かでほぼ決まります
会社売却 税金の結論は、株式譲渡か事業譲渡かで税負担の構造が変わるという点にあります。
一般的には、個人オーナーさんが会社を売る場面では、株式譲渡(税率20.315%とされます)が選ばれやすい傾向があります。
一方、事業譲渡は、法人税等(実効税率約30〜34%が目安とされます)に加えて、課税資産には消費税10%が関わる可能性があり、税務・実務ともに論点が増えやすいです。
なぜ税金が大きく変わるのか:課税される主体が違うためです
株式譲渡:税金は「株主」にかかります
株式譲渡は、オーナーさん(株主)が保有株式を買い手さんに売る方法です。
この場合、原則として会社そのものに税金がかかるのではなく、株式を売った株主に課税されます。
個人株主さんの税率の目安
個人の株式譲渡益は、所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の合計で、20.315%とされています。
課税方式は申告分離課税です。
法人株主さんの税率の目安
株主が法人の場合、譲渡益は法人の所得として扱われ、法人税・住民税・事業税などを含む実効税率で約30〜34%が目安とされています。
事業譲渡:税金は「会社(法人)」にかかります
事業譲渡は、会社が事業や資産を切り出して売る方法です。
売り手は法人であり、売却益は法人の課税所得に合算され、法人税等が計算されます。
さらに、課税資産を譲渡する場合は、消費税10%が関係する可能性があります(土地など非課税の資産もあります)。
不動産が絡むと、不動産取得税や登録免許税、契約書の印紙税などが論点になるケースもあるとされています。
株式譲渡が選ばれやすい背景
中小企業M&Aの実務では、オーナーさんの手取り最大化を目的に、株式譲渡が選ばれやすいと言われています。
主な理由は以下のとおりです。
- 会社に法人税が原則かからず、個人オーナーさんの譲渡益に20.315%課税(目安)で整理されやすい
- 従業員さんや取引先との契約を原則として引き継ぎやすく、実務負担が比較的小さい
事業譲渡が選ばれる場面と税務上の特徴
一方で、事業譲渡が合理的な場面もあります。
たとえば、不要事業だけを切り離したい、買い手さんが特定事業のみを希望している、簿外債務などのリスクを会社ごと引き継ぎたくない、といった事情がある場合です。
税務面では、次のような特徴があるとされています。
- 売却益が法人税等(実効税率約30〜34%が目安)の対象になりやすい
- 課税資産には消費税10%が関係する可能性がある
- 資産ごとに時価配分が必要になり、専門家関与が前提になりやすい
税額と手取りのイメージ:計算例で整理します
例1:個人オーナーさんが株式譲渡で1億円で売却した場合
個人オーナーさんの株式譲渡益の計算は、概ね次の式で整理されます。
譲渡所得(譲渡益)= 売却額 − 取得費 − 譲渡費用
税額は、
税金 = 譲渡所得 × 20.315%(目安)
具体例として、以下のケースです。
- 売却価格:1億円
- 取得費:500万円
- 譲渡費用(仲介手数料等):500万円
譲渡益は、1億円 −(500万円+500万円)= 9,000万円です。
税額は、9,000万円 × 20.315% ≒ 約1,828万円とされています。
手取りは、1億円 − 約1,828万円 = 約8,172万円が目安になります。
例2:個人オーナーさんが株式譲渡で5,000万円で売却した場合
次に、売却価格が5,000万円のケースを想定します。
- 売却価格:5,000万円
- 取得費:300万円
- 譲渡費用:200万円
譲渡益は、5,000万円 −(300万円+200万円)= 4,500万円です。
税額は、4,500万円 × 20.315% ≒ 約914万円とされています。
手取りは、約4,086万円が目安になります。
例3:法人が保有株式を売却した場合(法人株主)
法人が株式を売却した場合も、基本の考え方は「売却額−取得費−譲渡費用」が譲渡益になります。
税率は、法人税・住民税・事業税等を含む実効税率で約30〜34%が目安とされています。
たとえば譲渡益が3,000万円であれば、税額は3,000万円×30〜34%≒約900万〜1,020万円程度というイメージになります。
ただし、法人は他の所得と通算されるため、期中の利益状況や欠損金の有無で変動する可能性があります。
例4:法人が事業譲渡をした場合(法人税等+消費税の論点)
事業譲渡では、譲渡する資産の簿価と売却額の差額が売却益となり、法人税等の対象になります。
加えて、譲渡対象に課税資産が含まれる場合、消費税10%が関係する可能性があります。
たとえば、譲渡対価のうち「機械・備品・在庫・のれん」など課税資産に該当する部分が大きいと、資金繰り上のインパクトが出る場合があります。
どの資産が課税か、土地のように非課税か、対価配分をどうするかは個別性が強いため、税理士さんの関与が推奨されます。
会社売却の税金で見落としやすいポイント
会社売却 税金の検討では、税率だけでなく「課税対象の利益がいくらか」「費用計上できるものは何か」が重要です。
- 譲渡費用(仲介手数料、FA報酬など)が譲渡益の圧縮に関係する可能性があります
- 取得費が不明確な場合、計算が難しくなることがあります
- 事業譲渡は資産ごとの契約・対価配分・消費税判定が必要になりやすいです
また、節税・手取り最大化の考え方は複数ありますが、適用可否は状況次第です。
具体的な節税スキームは、必ず税理士さん等の専門家に相談するのが安全と考えられます。
まとめ:会社売却の税金は「どの売り方か」で全体像をつかむことが重要です
会社売却 税金は、まず株式譲渡か事業譲渡かで整理すると理解しやすいです。
- 個人オーナーさんの株式譲渡益:20.315%課税が目安とされています
- 法人の譲渡益:実効税率約30〜34%が目安とされています
- 事業譲渡:法人税等に加え、課税資産には消費税10%が関係する可能性があります
「1億円で売れた」という情報だけでは手取りは確定しません。
取得費、譲渡費用、対価配分、消費税の有無などを踏まえて、早めに試算することが重要です。
後悔しないために、早い段階で試算と専門家相談を進めるのが現実的です
会社売却は、価格交渉と同じくらい、税金とスキーム設計が結果を左右すると考えられます。
特に、株式譲渡と事業譲渡のどちらが適するかは、買い手さんの意向、引き継ぎたい資産・負債、不要事業の有無などで変わる可能性があります。
まずは、現状の株主構成、取得費の資料、想定売却価格、仲介手数料の見込みを整理し、税理士さんやM&Aの専門家に「手取りの概算」を確認するところから始めるのがよいと思われます。